着方レッスンコラム基本知識編
着物の右前と左前、どっちが前?正しい着方と注意点を紹介
2024.07.03
こんにちは!
「着たい人を、着る人に」
まるやま・京彩グループです。
着物の着方に、「右前」や「左前」という言葉を耳にしたことはないですか。
着物の右前と左前、どちらも「前」と付いていたら、どっちが前なのか迷ってしまいますよね。
「左側の身ごろが上よね。なぜ右前なんて言うの?」と、こんがらがってしまう方もいるかもしれません。
今回は、着物の右前と左前、どっちが前なのか、正しい着方と注意点をご紹介します。
目次
1.着物の右前と左前、どっちが前?
着物の右前と左前、それぞれの意味をご紹介します。
①着物の「右前」とは?
着物の右前とは、着方(着付け)の順番のことを表しています。
下記で、正しい着方(着付け)の方法をご紹介しますが、こちらで、衿合わせの時の着方(着付け)をご紹介しますね。
着物の衿合わせは、長襦袢からおこないますが、わかりやすいように「着物」と表記します。
- ・着物を羽織り、衿を後ろに抜く
- ・着物の衿(えり)を合わせる
この次の流れから「右前」の説明をしますね。
着物の衿をあわせて、衿を整えた後「右側の衿の下側を持ち、左の脇に添わせる」という動きをします。
これは「先に、右側の身ごろを、身体の前に添わせる」、次に「左側の身ごろを右側の脇に添わせる」という動きです。
「右前」というのは、「先に、右側の身ごろを、身体の前に添わせる」という意味になるのです。
②着物の「左前」とは?
着物の左前は、右前の逆ですから、右側の衿が左側の衿の上にかぶさる形です。
左側の身ごろを先に身体に添わせる(右側の身ごろが一番上になる)、という着物の着方(着付け)は「タブー(禁忌)・してはいけない着方」となっています。
左前は、「亡くなった人」が着る着物の着方で、普段では、左前で着物を着ることはありません。
ただ「左前」という言葉がある、ということを頭の片隅に置いておいてくださいね。
③着物の「左上前(ひだりうわまえ)」とは?
着物の「左前」はタブー(禁忌)という意味合いですが、「左上前」という言葉も一応あります。
「左上前(ひだり上前)」は、一般的では無いかもしれませんが、着付け教室で学ぶ時に使われていました。
左上前とは「左の身ごろが、一番上になる」という意味です。
着付け教室で「右側と左側、どっちが前(上)になるの?」と迷った時に、先生から「左が上になるように着るの。だから左上前と覚えたら、大丈夫よ」と教わった経験があります。
着付け教室によって、覚えやすい考え方を教えてくれるので、覚えやすい方法を取り入れていきましょう。
2.着物の正しい着方(着付け)をご紹介
着物の正しい着方(着付け)をご紹介します。
着物を着るためには、肌襦袢(肌着)と長襦袢の着付けも必要です。
順にご紹介しますね。
①着物の正しい着方(着付け)「肌襦袢」
着物は正しい着方(着付け)をすることで、着崩れが少なくなります。
まずは着物の土台である「肌襦袢の着方」からマスターしていきましょう。
1)肌襦袢の正しい着方(着付け)「足袋を履く」
着物は下から順に身に付けます。
まずは足元の足袋から履いていきましょう。
2) 肌襦袢の正しい着方(着付け)「裾除けを紐で留める」
裾除けを腰の部分に、右側を先に身体に添わせて左側をかぶせて紐で留める
裾除けは、上半身の部分が付いていない「巻きスカートのような肌着」です。
この時から「右前」を意識して、左側が上に来るように着用します。
3) 肌襦袢の正しい着方(着付け)「肌襦袢を羽織る」
肌襦袢を羽織り、身ごろの右側を先に身体に添わせて、左側の身ごろをかぶせて紐で留める
ワンピースタイプの肌襦袢の場合は、2)を飛ばして肌襦袢を羽織って身に付けていきましょう。
4) 肌襦袢の正しい着方(着付け)「補正をする」
胸とお腹周りの凹凸を無くすため、お腹周りや腰・肩の部分に、折りたたんだフェイスタオルで補正をします。
お腹周りや腰の部分に補正をすると、帯が綺麗に結べますし、汗止めになりますので、帯のお手入れが楽になりますよ。
フェイスタオルを腰紐で止めるときの結び目は、身体の正面から少しずらした場所で結びましょう。
同じ場所に結び目を作ると、帯を締めた時に、同じ場所が圧迫されて苦しくなってしまいます。
長襦袢や着物を着るので、腰ひもの結び目が同じ場所にならないように、注意しておきましょう。
②着物の正しい着方(着付け)「長襦袢」
肌襦袢が終わったら、長襦袢の着付けです。
長襦袢の衿元は着物から見えるので、綺麗に着付けをしていきましょう。
1)長襦袢の正しい着方(着付け)「長襦袢を羽織る」
長襦袢は両肩に羽織るようにかけて、両方の袖に腕を通します。
2) 長襦袢の正しい着方(着付け)「コーリンベルトを付ける」
右前を忘れないように、身ごろの右側を身体に添わせて、身ごろの左側をその上にかぶせます。
その後、左の身八ツ口(脇の空いている部分)から、コーリンベルトの片方のクリップで右側の衿先を固定します。
コーリンベルトのもう片方クリップは、身体の背中側へ回して、左側の衿先を固定する。
3) 長襦袢の正しい着方(着付け)「衣紋(えもん)を抜く」
右前を忘れな衿の後ろの部分の、衣紋(えもん)をこぶし一つ分ほど抜きます。
片手で背縫いの部分を持ち、もう片手は衿とうなじの間に入れて、こぶし一つ分空くように、背縫いの部分を下に引っ張ります。
コーリンベルトで留めている部分がシワにならないように、下に余った部分を流し、さらに脇の部分を身八ツ口の方にも流します。
4) 長襦袢の正しい着方(着付け)「伊達締めを締める」
伊達締めを半分に折り、中心の平べったい部分が身体の正面に来るように、正面に合わせて、紐を後ろから前に持ってきて締めます。
締めた後、前と後ろの身ごろに寄ったシワを脇(身八ツ口)の部分に流します。
5) 長襦袢の正しい着方(着付け)「身八ツ口の処理をする」
身八ツ口の部分を、スッキリさせておきましょう。
身八ツ口によけたシワの部分を、前身ごろの部分を後ろ身ごろにかぶせます。
この処理で、脇の部分がスッキリします。
③着物の正しい着方(着付け)
長襦袢の着付けが終わったら、最後に着物の着方(着付け)です。
着物が綺麗に着付けられると、帯も綺麗に結べますよ。
「右前」を忘れないように、着物を着付けしていきましょう。
1)着物の正しい着方(着付け)「着物を羽織る」
着物を両肩に羽織り、袖を通します。
袖を通すとき、長襦袢の袖を手に持って通すと、長襦袢の袖が邪魔になりません。
2) 着物の正しい着方(着付け)「着物の裾の高さを決める」
着物は、裾の部分が長く、余った部分はおはしょりになります。
まずは裾の高さを決めないといけません。
「右前」を、忘れないようにしていきましょう。
- ①左右の衿先の下の部分を持ち、裾が床に付かない高さに持ち上げる
- ②裾の高さをキープしたまま、前身ごろを広げる
- ③先に左の前身ごろ(上前)の端の部分を決めるため、裾の高さをキープしたまま、左の衿先を持っている手を右の腰骨に合わせる
- ④左の前身ごろ(上前)を開き、右の前身ごろ(下前)を左の側面に合わせて、右の前身ごろ(下前)の褄先(つまさき)を5~8cm上げる
- ⑤左の前身ごろ(上前)をかぶせて(この時、右の身ごろがズレないように、脇を締め左腕で押さえながら右手を外す)、左上前の褄先を5cmほど上げる(鏡でみたら、裾が狭くなるようにする)
3) 着物の正しい着方(着付け)「腰紐を結ぶ」
手で押さえている左上前の腰の部分がズレないように、押さえている手で腰ひもの中心を持ち、押さえている部分と、右の身ごろが落ちないように、腰ひもを通します。
この時、腰ひもは「腰骨の上」の位置に来るように巻けば、着物を着て過ごしていてもお腹が圧迫されないので、とても楽に過ごすことができますよ。
4) 着物の正しい着方(着付け)「背中のシワを取り、おはしょりを作る」
身八ツ口の部分から着物の内側に腕を入れて、腰ひもを結んだ時に出来たシワを、なぞるように取ります。
5) 着物の正しい着方(着付け)「衣紋(えもん)を長襦袢に合わせて、衿を整える」
長襦袢の衣紋に、着物の衿を添わせて、クリップで動かないように固定して、背縫いの部分が身体の中心に来るように、縫い目を合わせていきます。
着物の衿は、肩の部分(耳の下あたり)から、長襦袢の衿が5mmほど見えるように添わせます。
6) 着物の正しい着方(着付け)「前身ごろのおはしょりを作る」
身八ツ口から、着物の内側に手を入れ、前身ごろにあるシワを伸ばします。
左の身ごろの下にある、右の身ごろを、着物の中で上に三角に折り上げれば、帯を巻いてもゴワつくことがなく、スッキリしますよ。
7) 着物の正しい着方(着付け)「コーリンベルトで衿元を固定する」
左の身八ツ口から、コーリンベルトの片方のクリップで右側の衿先を固定します。
コーリンベルトのもう片方クリップは、身体の背中側から回して、左側の衿先を固定します。
8) 着物の正しい着方(着付け)「伊達締めを結ぶ」
伊達締めの中心部分が正面になるように、前から後ろに回します。
背中でクロスさせて、前に戻すときに、着物と紐の間に指を入れて、背中のシワを取り、前で結びます。
9) 着物の正しい着方(着付け)「身八ツ口の処理」
伊達締めを結び終わったら、身八ツ口によけたシワの部分を、脇に寄せ、前身ごろを後ろ身ごろにかぶせます。
身八ツ口の処理は、帯を締める前にしておきましょう。
帯を締めてからは処理ができないので、忘れないように注意が必要です。
3.着物の着方の注意点をご紹介
着物の着方(着付け)の注意点をご紹介します。
着物の着方(着付け)には、下記のパターンがあります。
- ・自分で着物を着付ける
- ・誰かに着物を着せる
自分で着物を着るときは「左の身ごろが上」と、自分で考えながら着付けをすることができます。
ですが下記の場合は、迷うこともあります。
- ・鏡を見ながら着付けをする
- ・誰かと向かい合わせで着付けをする
いざという時にパニックにならないように、着物の着付け(着方)をするときに気を付けておきたい注意点をご紹介します。
①着物の着方(着付け)の注意点「向かい合う時、見える衿元は「y」の形になる」
鏡を見ながら自分で着物の着付けをするときや、向かい合わせで着物の着付けをするときは、衿元が「y」の形になるように整えましょう。
この「y」の形は、アルファベットのYの小文字です。
この「y」は、着物の衿元と同じ形をしていますから、覚えていてくださいね。
②着物の着方(着付け)の注意点「柄がある(多い)方が上になる」
無地や総柄(着物全体に柄がある)の着物は対象外ですが、柄のある着物全般で使える方法です。
着物は、一番よく見える場所に、柄が華やかに配置されるように縫われています。
柄は、左の衿の部分と身ごろの裾にありますので、その柄が見えるように着付け(着方)していきましょう。
「華やかな柄がある身ごろを一番上にする」と、注意して覚えておきましょう。
4.まとめ
今回は、着物の右前と左前、どっちが前なのか、正しい着方と注意点をご紹介しました。
- ・右前という言葉は、着物の身ごろを身体にまとわせる順番
- ・左前は「着物を着るときに、してはいけない着方」という注意喚起の言葉
- ・どちらの衿を上にするか迷った時は、「y」を思い出す
近年、着物を自由に楽しむ人たちも多くなり、自由な着物の着方も容認されています。
ですが「左前」という着物の着方(着付け)は、禁忌とも言われる着方ですので、絶対に間違えないように注意していきましょう。
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