きものを「着たい人」を「着る人」に。まるやま・京彩グループ

着方レッスンコラム季節編

「夏の着物の選び方を紹介!着物の種類とマナーも徹底解説!」

2024.07.17

こんにちは!


「着たい人を、着る人に」


まるやま・京彩グループです。


「夏でも着物を楽しみたい」と思う方は多いですが、夏の着物はどのような種類があるのか、それにフォーマルな場に行くときのマナーも気になりますよね。

「暑いから、夏場のお出かけはお洋服で」と、考える人も多いかもしれません。

夏の季節に着用する「夏着物」は、着る人だけではなく、見ている人達にも「涼しさ」を感じさせてくれる着物です。


今回は、夏の着物の選び方や、着物の種類の紹介と、夏着物のマナーを徹底的に解説します。



1.夏の着物の選び方を紹介!


着物は、場面(シーン)によって、着る着物が決まっています。

ですが夏着物は、着用する期間が短いため、どのシーンでどの夏着物を着用してもいいのか、あやふやになっている人が多いのではないでしょうか。

夏着物のシーンごとの選び方をご紹介します。



①着物の格式とは



着物には格式があり、着用する行事(結婚式やイベントなど)や立場によっても、着る着物が変ります。

夏着物の場合も、例外ではありませんので、着物の格式をしっかり確認して着物を楽しみましょう。


  • ・第一礼装…打掛(花嫁衣裳)・留袖(既婚女性)・振袖(未婚女性)・黒紋付(喪服)
  • ・準礼装(略礼装)…色留袖・訪問着・付け下げ・色無地
  • ・外出着…小紋・付け下げ小紋・紬(つむぎ)・絞り(振袖や訪問着はフォーマルでも可)など
  • ・普段着(カジュアル)…紬(つむぎ)・絣(かすり)・ウール・木綿・浴衣など

着物の格式は、「夏着物は適用されない」ということは無いので、夏の着物も着るシーンに合わせて選んでいきましょう。



②夏着物はいつ着用する?



夏着物は、着用する時期が短いですが、具体的にどのくらいの季節に着用するのかをご紹介します。

夏着物は、一般的な「衣替えの時期」から着用し始めます。


  • ・6月から9月くらいまで…単衣
  • ・7月・8月の暑い時期…絽・紗・麻

暑い時期は、単衣の夏着物で過ごすことが基本です。

もしも、絽や紗の着物を持っているならば、7月8月に着用しましょう。という、考え方ですので「7月8月は、絶対に絽や紗の夏着物を着ないといけない」という訳ではありません。


まずは、単衣の夏着物を楽しみながら、絽や紗の着物を少しずつ揃えて、暑い夏も着物を楽しんでいきましょう。



③夏着物のシーン別の選び方



夏着物の種類は、下記でどのような着物なのかをご紹介しますが、夏着物の素材によって、どのシーン(場面)に着て行けばマナー違反にならないのかをご紹介します。



夏の冠婚葬祭、どの夏着物を着る?



夏場の冠婚葬祭、特にお祝いの席である「結婚式」に着用する夏着物はどの素材の着物がいいのでしょうか。


弔事(お葬式)の時には、絽の布地で喪服が仕立てられますよね。

慶事である結婚式も同じで、絽の着物がおすすめです。

ゲストとして参列する場合も、絽の訪問着は準礼装となりますから、マナー違反にはなりません。


ただし、式場やホテルは空調が効いていますので、絽の着物では寒さを感じる場合もあります。

その場合は、袷の着物で参列しても問題ありません。

ガーデンウェディングや、神社で執り行われる神前式もありますから、結婚式に参列する時は、会場の空調も確認しておくことをおすすめします。



夏のお出かけ、どの夏着物を着る?



夏着物を着る機会は、冠婚葬祭の時だけではありません。

そして「お出かけ」と言っても、色々なパターンがありますよね。

下記のパターンで、どの夏着物を着るのか考えてみましょう。


  • ・ホテルでの会食・お茶会など…絽・紗(紗袷(しゃあわせ))
  • ・友達との気軽なお付き合い…紗・麻

「絽はフォーマルなシーンで、紗はセミフォーマル、麻は気軽な外出」と、覚えておけばわかりやすいですよ。



2.夏の着物の種類


夏の着物の種類と、それぞれの布地の特徴をご紹介します。



①夏の着物の種類「単衣(ひとえ)」



夏の暑さが始まる6月ごろから、暑さが和らぐ9月ごろに着用する着物です。

暑さがピークの時には、下記で紹介する「薄物」の着物を着用しますが、薄物の着物を持っていない場合は、夏の季節の間でも着用できます。


裏地(胴裏)がついておらず、着物の表地のみで仕立てられていますので、袷(あわせ)の着物よりも、風通しも良く涼しいです。

下に着る長襦袢で、暑さ対策ができます。

その時の気温によって、着合わせを考えていきましょう。



②夏の着物の種類「薄物・絽(ろ)」



夏の季節の、フォーマルな場で着用する夏着物です。

「絽目(ろめ)」と呼ばれる布地で、横一列に均一な隙間ができるように織られ、細かい穴が縞模様に入っています。

透け感があり、見た目だけでなく通気性も良いので、とても涼しいですよ。



③夏の着物の種類「薄物・紗(しゃ)」



絽よりもさらに、通気性に優れている紗は、布地全体に隙間があり、薄くて軽いという特徴もあります。

夏着物は、単衣で仕立てられるものが多いのですが、「紗袷(しゃあわせ)」という、とても豪華な着物もあるのです。

組み合わせは、「絽と紗」や「紗と紗」という、表裏共に透ける布地で作られているため、透け感をおしゃれに楽しめる着物となります。



夏の着物の種類「薄物・麻(あさ)」



麻の布地は、お洋服にも使われていますから、身近な布地ではないでしょうか。

通気性が良いだけでなく、吸湿性も良いので、夏着物にも使われている布地です。

お洋服でもカジュアルな印象を与えますが、着物でも同じで、格式は高くないので、カジュアルなシーンで着用します。



夏の着物のマナーを解説!



夏の着物のマナーを解説します。

夏の着物は、着る期間が短いのですが、その間にフォーマルな装いをしなければならない場合もありますよね。

フォーマルな場面に行くときは、そのシーンに合った着物を着る必要がありますが、夏の季節でも同じですので、忘れないように気を付けておきましょう。



①夏のフォーマルな場面(シーン)には「絽(ろ)の着物を」



フォーマルな着物が必要な場面とは、「冠婚葬祭」を頭に思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

地域によって違いもありますが、ひと昔前は、娘さんがご結婚の際には「黒紋付(喪服)一式作って、嫁入りする」という習慣もありました。


その時に「夏用と袷の黒紋付(喪服)」をそれぞれ一式作って、いざという時に困らないようにしていたのです。

その時に使われていた夏用の黒紋付(喪服)の布地は「絽」で、それは今も変わりません。


黒紋付(喪服)は、既婚女性の第一礼装ですから、「絽」の布地の着物が、夏のフォーマルな場にふさわしい着物となります。



②カジュアル・セミフォーマルなシーンは「紗や麻の着物で」



カジュアルやセミフォーマルな場面(シーン)では、紗や麻の着物を着用しましょう。



なぜ「紗」の着物はフォーマルに向かない?



絽の着物と同じように、布地に透け感のある紗の着物は、絽よりも透け感を多く感じさせます。

涼しげに見える反面「透けすぎる」という理由があるので、フォーマルな場面(シーン)には向きません。


ただし、セミフォーマルなシーン(結婚式の二次会やホテルでのランチなど)では、エレガントさを感じさせる色合いのものであれば、問題なく着用できますよ。



麻の着物はフォーマルに向かない?



麻の着物は、高級な布地のものもありますので、フォーマルなシーンでも着用できると思うかもしれません。

ですが、麻の布地の着物は「普段着」というカテゴリーに入ります。

カジュアルに着物を楽しむ布地ですので、普段着ではありますが、ちょっとしたお出かけにも着用できますよ。



③夏着物の下に着る長襦袢の選び方



着物の下に必ず着用する肌着は「長襦袢」です。

では夏着物を着るときの長襦袢は、袷の着物の時と同じ長襦袢でも良いのでしょうか。



夏の始まりと終わりの時期に着る単衣の着物の場合



夏の始まり(6月くらい)から、夏が終わる9月くらいの間に着る単衣の着物の場合は、その時の気候によって、袷の長襦袢でも大丈夫です。

ですが「まだ暑い」と感じる場合は、単衣の長襦袢を着用しましょう。



薄物の着物を着る場合の長襦袢は?



薄物の着物を着る場合の長襦袢は、単衣の長襦袢を必ず着用しましょう。

なぜならば薄物の着物は、下に着ている長襦袢も見えてしまうからです。

もしも袷の長襦袢を着ていた場合、その長襦袢が透けて見えてしまうので、注意が必要です。


そして、フォーマルなシーンで着用する絽の着物を着るときは、絽(正絹)の長襦袢を着用しましょう。

正絹の夏着物を着る場合は、下に着る長襦袢も正絹のものに揃えておけば、手首の部分や袖の振りの部分がのぞいて見えてしまっても、悪い印象を与えません。

フォーマルなシーンでは、着物と素材を合わせて着用することを忘れないようにしましょう。



薄物の着物を着る時の長襦袢は、身体にピッタリサイズで



着物は、自分にぴったりのサイズに仕立てて着用することもありますが、誰かから譲り受ける場合もあります。

その場合、サイズがピッタリであれば問題はありませんが、多少サイズが合わない場合もありますよね。

袷の着物の場合は、多少サイズが違っても、長襦袢が見える範囲が限られますし、その部分を隠すことができます。


薄物の長襦袢の場合は、サイズ直しをすることをおすすめします。

なぜならば、薄物の夏着物を着ている時は、長襦袢も透けて見えるからです。


もしも、長襦袢のサイズが合っていなかったら、夏着物の下でごわついているものが見えますし、長襦袢が短ければ、肌が見えますので、あまり良い印象を持たれません。

長襦袢が身体に合わない場合は、新しく仕立てるか、サイズ直しを検討しましょう。



二部式の長襦袢も避けた方がいい



「着付けがとても楽にできる」ということで、二部式の着物や長襦袢も人気がありますよね。

二部式の着物や長襦袢は、お腹周りで分かれているので、手早く着物を着たい人におすすめです。


ですが,薄物の夏着物の下に着る長襦袢は、二部式ではない長襦袢をおすすめします。

それは、薄物の夏着物は「透ける」からです。


帯を結ぶので、見えないだろうと思うかもしれませんが、何かの時に長襦袢の切り返しの部分が見えてしまう可能性があります。

透けることを気にしてソワソワしていたら、外出も楽しめませんよね。

夏着物を着るときは、二部式の長襦袢はやめておきましょう。



まとめ



今回は、夏の着物の選び方や、着物の種類の紹介と、夏着物のマナーを徹底的に解説しました。


  • ・夏着物は、着る季節が短い
  • ・夏着物にも、格式があるので着用するシーンに合わせて着用しよう
  • ・夏着物も、袷の着物と同じようにマナーがある

夏着物は、着る人だけではなく、見ている人たちにも涼しさを感じさせてくれる、不思議な着物です。

「夏の着物は暑い」というイメージを払拭してくれますから、夏着物でおしゃれを楽しみつつ、暑い夏を元気に乗り越えて行きましょう。


まるやま・京彩グループでは、着物好きの皆さんがステキな着物ライフを送れるよう、お役立ち情報発信をしていきます!

着物のことをもっと知りたい、着物をもっと楽しみたい、そんな声にお応えするブログを目指しています。